日本財団 図書館


 

第2章 環境教育の理念と目的

田島澄雄(千葉市立幸町第三小学校)
環境教育で目指すところは、持続可能な社会実現のために行動の取れる人間を育成することです。それは今ある環境問題を解決することはもちろん、将来における環境問題を未然に防いだり、自然と調和の取れる生活を確立したりすることをねらっています。
人類が長い間かかって築き上げて来た現代の世の中の枠組みが、それよりもはるかに長い年月をかけて生命の宿る惑星に作り替えられて来た地球に、環境破壊という形で生命存続の危機を引き起こしているとしたならば、これに代わる世界の実現が必要になってきます。すなわち、環境教育はこの新しい世の中の枠組みを作り上げていくための基礎を培うという意味で積極的な教育といえます。
その世の中とは、支配・被支配や差別があったり、特定の人間が他の人間の犠牲のもとに豊かな自然を享受したりすることではなく、人間が生を受け現在および未来におけるその能力・可能性を十分に現すことができ、地球上で同等な権利と義務を持ち、一人ひとりが自分の責任においてお互いにかかわりあいながら共生して行く社会です。みんなで作り上げていく世の中です。みんなとは現存するすべての人であり、将来生まれてくるであろう人であり、自然です。
現在、地球上には様々な風土に、多様な価値観を持ち、生活様式が異なる人々が住んでいます。これらの人々の活動が複雑に絡み合って環境問題が発生しているといえます。すなわち、環境問題を引き起こしたのは人間であり、他の生物や自然には全く責任がありません。それなのに今やすべての生命・非生命までをもこの問題に巻き込んでしまいました。原因のすべてに人間の活動が関係しているということは、その解決においても、人間はすべての責任を負わなければならないということです。
環境教育は環境問題を解決するための能力を身につけるための教育ですが、それでは何を学ぶべきかといいますと、上記のことを考えるならば人間そのものを学ぶことであり、かっ、こうしたことに対する自分自身の感性や行動能力を育てることであるといえます。ここでいう人間理解とは人間の欲望、人による考え方・価値観の相違、社会の仕組み、生活様式等を理解することです。
こうしたことの理解のもとに、人と人、人間と他の生命とがお互いに地球上の良きパートナーとして生活するための、共存の世界を作り出して行く能力を身につけることです。
環境教育で大切なことはただ自然を学んだり、白然破壊や公害問題を学んだりするだけでなく、さらに一歩進めて利害や立場の違った者同士がいかに新しい方向性を見いだせるかという前向きな考え方で取り組むことです。
環境教育の目標を明記したものとしては、ベオグラード憲章(1975年)やトビリシ宣言(1977年)があります。
ベオグラード憲章1)
[目標]
関心:全環境とそれにかかわる問題に対する関心と感受性を身につけること。
知識:全環境とそれにかかわる問題及び人間の環境に対する厳しい責任や使命についての基本的な理解を身に付けること。
態度:社会的価値や環境に対する強い感受性、環境の保護と改善に積極的に参加する意欲などを身に付けること。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION